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うちの魔王様 勇者ED後







「……何見てるんですか」

頬張っていたマカロンを呑み込んだ彼女は、
決して好意的でない、簡単にいえば不審そうな視線を。

見つめられるのは嬉しいが、
ジト目じゃなくて、上目遣いが良いなあ。
なんて贅沢を思ってみる。

「美味しそうに食べるなあって」
「私は見世物じゃありません」

彼女は訴えてから頬を膨らませた。
この小さな体のどこからあんな大声が出るのか。
ちょっと油断した。耳がキンキンする。

「俺にとってはどんな美術品よりも、
 魅力的なんだけどね」
「……言ってて恥ずかしくないんですか」

ごもっとも。承知の上さ。
我ながら臭いなあと実感はあるが、
それに見合う容姿だとも自負している。
利用しない手は無いよね。

必殺勇者スマイル!
まあ単なる笑顔なんだけど。
を向けて、またじっと彼女を見つめ始める。
……予想通り嫌な顔されたよね。
そういう一筋縄にいかない所も好きだから良いけど。

何かにつけて街へ連れ出しているけれど、
いっこうにサラは絆されない。
その姿は懐かない子猫を思わせる。
たとえ引っ掻かれても大して痛くない所とか。

未だに雑談すら思い通りにいかず、
口を開けば、アイツの事ばかり。
腹立たしい事この上ないが、
アイツについて語るサラは本当に可愛い。
耳栓をしていれば、純粋に楽しめる。

キラキラ目を輝かせ、とびきりの笑顔は正に恋する女の子。
その表情、俺にも向けてほしいんだけど。
ああ、本当アイツ殲滅したいなあ。

「……勇者、アンタ甘い物は食べれますか」
「ん?好きだよ」

突然サラが話題を切り出した。
サラから話しかけてくるなんて珍しい。
それに俺の事だなんて。

じゃあ、と鞄から小さな包みを取り出し俺の前に置く。
可愛らしいラッピングのそれはどうみても贈り物のような。
ひとまず受け取ってみる。
軽い。質問からして菓子だろうか。

行儀は良くないが、その場で包みをほどく。
現れたのは……随分歪だが、クッキーらしい。
この形からしておそらく手作りなんだろう。

「……小悪魔が勇者に借りを作るなんて、笑えませんから」

そういった彼女の表情は冷めたもので、
声もひどく淡々としている。
本当に義理であると訴える顔だ。

だがそれでもいい。
自分の為に作ったという時点で随分な進歩をしている。
大きな一歩を踏み出してくれた。

「いただきます」

お世辞にも美味しそうとは言えないそれを一口。
味はうん、なんていうか、ノーコメントで。
でもこの喜びの前には、
そのクッキーとは思えぬ強烈な匂いすら霞む。
自分でも呆れるほど、俺は彼女が好きなのだと改めて思い知る。

(……絶対に負けないからな、魔王。お前だけには)

平和も、小悪魔も、渡さない。
こうして希望が見えた以上、いっそうその決意は固くなる。
なあに、切り札(ラブレター)は俺の手にあるのだ。何も恐れる事はない。

「素敵な味だね、サラ」

勝利の確信に、口元は自然と緩んだ。






ばいおさんからバースデーSSを頂きましたーvv
うちまおから勇者とサラたん小説!!
ばいおさんは以前からうちまお気に入って下さっていたので嬉しいです〜。
こんな掛け合い絶対あの後してますよねー。
すかした態度で生意気な勇者でも、サラの前だと報われない恋に悩む青年なのです・・・。
それにしても凄まじいマカロンの魔力!!
どうしょうもなくマカロンが食べたい!!(笑)
ばいおさんっ、素敵な小説をどうもありがとうございましたーvv
頑張れよ勇者!!(笑)